引越しを検討する際、家賃をグッと抑えられたり、最近流行りのリノベーションで室内がオシャレになっていたりする「築古(ちくふる)物件」は、非常に魅力的な選択肢です。
しかし、「家賃が安くて部屋も綺麗!ここに決めた!」と即決するのは少しお待ちください。古い物件には、間取り図やパッと見の綺麗さだけでは絶対に分からない「落とし穴」が潜んでいることが少なくありません。
住み始めてから「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、古めのアパートやマンションの内見で必ずチェックすべき5つの重要ポイントを、リアルな生活視点から解説します。

1. 毎日使うからこそ致命傷になる「水回り」の罠
築古物件で最もトラブルになりやすく、かつストレスを感じやすいのが「水回り」です。表面上は綺麗にクリーニングされていても、壁の中の配管までは新しくなっていないケースが多いからです。
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水圧と温度調節のチェック: 可能であれば、キッチンやお風呂の水を実際に出させてもらいましょう(※水道が通っていない場合は要確認)。古い物件は水圧が極端に弱かったり、お湯とお水を2つの蛇口でひねって温度調節をする「2ハンドル混合栓」だったりして、毎日のシャワーがストレスになることがあります。
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排水溝の「臭い」: 部屋に入った瞬間、下水のようなツンとした臭いがしないか確認してください。長期間空室で水が干上がっているだけのケースもありますが、配管自体が劣化しているサインの可能性もあります。
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洗濯機置き場の「サイズ」と「防水パン」: 昔の物件は、洗濯機置き場が「二槽式」や「縦型の小さな洗濯機」のサイズで作られていることがあります。現在主流のドラム式洗濯機や大型の縦型洗濯機が、幅や奥行き、さらには水栓(蛇口)の高さが干渉して置けないトラブルが頻発しています。メジャーでの採寸は必須です。
2. 現代のライフスタイルに合っているか?「電気容量とネット・コンセント」
建物が建てられた昭和〜平成初期は、今ほど家電製品が多くない時代でした。そのため、電気周りのインフラが現代の生活に追いついていないことがあります。
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ブレーカーの「アンペア数」: 築古アパートでは、契約できる電気容量の上限が「20アンペア」などに制限されていることがあります。20アンペアだと、エアコンをつけながら電子レンジとドライヤーを同時に使った瞬間にブレーカーが落ちます。上限の引き上げ工事が可能か、管理会社への確認が必要です。
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コンセントの数と位置: スマホの充電、PC、テレビ、各種家電…。現代人はコンセントを大量に消費します。古い物件は「一部屋に1箇所」しかコンセントがないことも珍しくありません。タコ足配線は火災の原因にもなるため、生活動線にコンセントがあるか確認しましょう。
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「インターネット無料」の落とし穴: 建物全体で古い配線(VDSL方式など、電話線を使ったもの)を使っている場合、夜間などに通信速度が極端に遅くなり、動画視聴やテレワークに支障が出ることがあります。光回線を個別に部屋まで引き込めるのかどうかも重要なチェックポイントです。
3. 健康と光熱費を直撃する「断熱性とカビ・結露」
古い物件は、現在の建築基準と比べて「断熱性能」が圧倒的に劣る場合が多いです。これが、冬の寒さや夏の暑さ、そして「カビ」の原因になります。
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窓ガラスとサッシの古さ: 昔ながらの薄い「単板ガラス」や「アルミサッシ」は、外の冷気をダイレクトに室内に伝えます。冬場は窓が結露でびっしょりになり、毎朝カーテンや床を拭く羽目になります。
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カビの痕跡を探す: 窓枠のゴムパッキン、北側の部屋の壁紙の隅、押し入れやクローゼットの奥を懐中電灯で照らして確認してください。黒ずみがあったり、不自然にそこだけ壁紙が新しく張り替えられていたりする場合は、慢性的なカビ・結露が発生している証拠です。カビ臭さはアレルギーなど健康被害にも直結するため、絶対に妥協してはいけないポイントです。
4. 見えないストレスの元凶「防音性と建物の歪み」
特に木造や軽量鉄骨造の古いアパートでは、生活音の漏れがトラブルの火種になりがちです。
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壁と床の響き: 壁の真ん中あたりを軽くコンコンとノックしてみてください。軽く響くような音がすれば、壁が薄い証拠です。また、部屋の中を歩き回ってみて、床がギシギシと沈んだり鳴ったりしないか、ビー玉を転がして床が傾いていないかもチェックしましょう。建物の歪みは、ドアや襖の「建付けの悪さ(スムーズに開閉できない)」にも表れます。
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周囲の環境音: サッシが古いと、外の車や電車の音、話し声なども室内に筒抜けになります。内見時は少しの間だけ口を閉ざし、部屋の中で「耳を澄ませる時間」を作ってみてください。
5. 建物が古くても「管理状態」が良ければお宝物件!
最後に、部屋の中だけでなく「建物の外」に目を向けましょう。建物自体が古くても、管理会社のメンテナンスや清掃が行き届いていれば、快適に暮らせる「お宝物件」になり得ます。
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ゴミ置き場・駐輪場・集合ポスト: この3箇所は、「管理会社のやる気」と「今の住人のモラル」を如実に表す鏡です。 ゴミが散乱しカラスの被害に遭っている、パンクして埃をかぶった自転車が放置されている、ポストの周りに不要なチラシが散乱している…。こうした物件は、入居後に何かトラブル(水漏れや騒音など)が起きても、管理会社がすぐに対応してくれないリスクが高いと判断できます。
妥協点と「絶対に譲れない点」を見極めよう
築古物件を選ぶということは、「新築や築浅と同じ完璧な設備を求めない」というある種の割り切りが必要です。 しかし、「不便な思いを我慢し続ける」こととは違います。
今回挙げた5つのポイントを内見時にしっかりとチェックし、「ここなら工夫次第で快適に暮らせる」「この水回りの古さは毎日のストレスになるからNG」と、自分の中で明確な線引きを行うことが大切です。 家賃の安さという最大のメリットを活かしつつ、あなたにとって居心地の良い最高のお部屋を見つけてください。

